「第一回シンポジウム」

ファシリテーターズクラブ第1回シンポジウム
「エキスパートに聞くファシリテーションの極意」ご報告
「ファシリテーターズクラブ第一回ジンポジウム」2003年8月6日)

2003年8月6日(水)東京国際フォーラムにて開催されたファシリテーターズクラブ第1回シンポジウムは、定員を超えるお申し込みを頂き、盛況のうちに終了いたしました。パネリストによる講演やご参加者とのQ&Aに加え、懇親会では参加者同士、様々な情報交換をされていて、ファシリテーションへの関心や熱意の高まりが感じられました。講演内容の抄録は下記をご覧ください。

堀公俊氏講演抄録
(お話の内容をファシリテーターズクラブでまとめさせていただいたものです)

ビジネス活動の外に、社会活動など幅広い分野でファシリテーションを行っていますが、所属していた経営企画部で、事務局として重役などの参加する会議の進行役を務めたことが発端となりました。ビジネスでは、問題解決、プロジェクト管理などから、企業変革プロジェクト、統合合併に関わりました。また、町づくりや地域活動において、社会的活動のファシリテーションを始めましたが、ビジネスのやり方が通用せず、ビジネススキルが万能ではないことを体験しました。

ファシリテーションの分野は、組織の改革から自己改革まで幅広く、目的も学習から合意形成や創造的活動まで多様です。その難易度は、メンバーの凝集性に関係があります。凝集性とは、考えや文化の同質性のことで、凝集性が高いと難易度が低く、凝集性が低いと衝突が起こりやすく難易度が上がります。たとえば、クロスファンクション、企業間、社会活動、異文化間、民族間の順に難易度が上がります。

ファシリテーションではランクを考慮することが重要です。ランクとは格のようなもので、男女の性別、年齢、組織における上司と部下、貧乏と金持ちなどがランクを構成する要素となります。ランクは無意識にコミュニケーションに影響を与え、特に、ランクが下位の人ほどランクを意識する傾向にあります。たとえば、ランクの高い人が話をまとめても、必ずしもそのスキルが高いことを意味しません。それはランクのためであり、ビジネスで通用しても、コミュニティーでは通用しないことが良くあります。

ファシリテータには、2つのタイプがあり、左脳型は、ビジネス、テクニカルな分野で、経営学などをベースとして体系的、論理的なアプローチを用いて成果を出し、右脳型は、トランスパーソナル心理学などをベースに、個人の内面変革などを促進し、特にアートの分野が活躍の場となります。この両方を統合することが理想的です。

ファシリテーションは、ビジネスでは遅れていますが、自己啓発、町づくりなどでは比較的進んでいます。教育、環境、民族間紛争の場でもファシリテーションは行われています。ただし、ファシリテータ相互や業界横断的なコミュニケーションが少なく、より活発な相互交流が期待されます。また、日本にはファシリテーションの研究者がおらず、全体を眺望できる人がいません。ファシリテーションは、日本人には不要とされてきましたが、価値観の多様化とともに、欧米のような体系化されたスキルが要求されています。これらを吸収して、日本のスタイルを確立することが必要です。日本のボトムアップという手法を応用すれば、欧米を越える日本流のファシリテーションを確立することができると考えています。ファシリテーションは一般の認知度がまだ低く、企業や社会のニーズはありますが、スキルのある人は少ないのが現状です。そのため、日本ファシリテーション協会というNPOを設立して、様々なジャンルのファシリテーションの普及に努めています。

アキレス美智子氏講演抄録

ファシリテーションには、3つのレベルがあります。1つは、会議やトレーニング のファシリテーション、次に、チームのファシリテーションで、プロジェクトマネジメントもこれに含まれます。3つ目は、組織のファシリテーションです。

従来の人事の役割は、人事全般の業務がスムーズかつ低予算で行われ、どこか らも不満の出ない企画を立案・実施することにありました。経済成長期において は、この方法でも通用しましたが、グローバル化など外的環境が10年前と大きく 変わりました。経営環境が厳しいここ数年は、組織再編や人員削減を行って利益 確保に努め、人材の選別が進み、パフォーマンスの低い人材には投資しないとい う傾向にあります。管理に終始する従来の人事体制では、現状には対応できませ ん。給与支払いや教育部門をアウトソースし、効率化を図り、戦略的人事にシフ トすることが求められています。

組織のファシリテーションをマトリックスで見ると、利益重視対コスト重視の軸と、管理およびオペレーション重視対戦略重視の軸があります。コスト重視+ 管理重視は、バックオフィス人事と呼ばれ、給料などをいかに早くスムーズに処 理するかに焦点となり、定型的な業務が主となります。これが、利益重視にシフ トしていくと、業務を切り離して分社化し、付加価値の高いサービスを社外の顧 客へ提供するようになります。 企業ユニバーシティや人材紹介会社などがその 例です。戦略重視+コスト重視は、社内コンサルタントの役割を担い、ラインマ ネージャへのサービス提供を行います。例えば、定型プログラムを実施しても効 果が見えないことがあり、問題のある部門に対しては、あるべき姿と現状の ギャップを明確にして、組織の再編、研修または配置換えなど様々な方法での変 革を進めます。利益重視にシフトすると、戦略パートナーとなり、人事が経営 チームの一員として信用を得て経営会議などに参加し、人事に限らず様々な経営 上の重要課題に関わっていくようになります。

組織ファシリテータは会社の各部門の業績目標と業務環境を理解していること が大前提です。ビジネスの共通言語で経営陣およびラインマネージャと話ができ る必要があります。マクロ的、組織横断的に見える位置にあるため、現場より業 務が良く見える場合もあります。各部門および役員と密接な関係を維持し、常に チェンジエージェントの役割を果たします。経営陣の言いなりではなく、主体的 にアイデアを発信し、文化を変えるきっかけとなることが期待されます。さら に、会社の戦略と現状を客観的に見て、議論の偏りを戻し、バランスを取る役割 も持ちます。また、ファシリテータには、相手と壁を作らず、どんな階層とも構 えず話ができる関係構築能力、様々な情報・意見の中からから本質を見極める洞 察力、点と点を線で結ぶ思考組み立て能力、結果を出す実行力、失敗から学ぶ能 力と打たれ強さが求められます。

企業文化を変え、再構築を促すファシリテーションは、これから、ますます重要になっていくでしょう。例えば、今注目されている企業再生は、経費削減と効 率化を中心に行われていますが、企業再生は人の再生であり、組織ファシリテー タが腕を発揮できる分野です。