「チームを問題解決に導く会議進行の技術」

「チームを問題解決に導く会議進行の技術」
  (「プレジデント」プレジデント社 2002年3月17日号)

 

(株)ピープルフォーカスコンサルティング 代表取締役
ファシリテーターズクラブ 代表
黒田由貴子

チームを結成してプロジェクトを立ち上げてはみたが、情報や問題点を全員に正確に浸透させることがなかなかできない、というな迷いを持った経験はないだろうか。そんな悩みを解決する「ファシリテーション・ツール」の効用を紹介しよう。紙と鉛筆があれば、どこでも活用できる優れ技術なのだ。

【会議を招集した目的を達成するよう照準を合わせよ】

チームの課題解決を支援するファシリテーション・ツール ファシリテーションとは、「中立的な立場でチームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、チームの成果が最大となるように支援する」スキルであり、「ファシリテーター」といえば、そのために会議を効果的に進行役させる役割である。一口に会議をうまく進行させるといっても、メンバーの自発性ややる気を保持し、チームのシナジー効果を醸成し、会議の中で成果を出していくことは至難の業である。今回はそんな悩みを解決するファシリテーション・ツールをいくつかご紹介しよう。いずれも特別なフォームや道具を必要とするものではなく、紙とペンさえあればどこででも活用できる手軽なものだ。

「ツール」というと「機械的な処理」のように思われる読者もいるかもしれないが、ファシリテーターがツールを活用するのは、意見やアイディアさらには本音をどんどん吸い上げていきたいときや、チームが感情論や私的見解を超えて、課題解決に取り組むことを支援したい時など様々だ。

ファシリテーション研修を行っていて一番多い質問が「どういった場面でどのツールを使うのが適切か」というものだ。適切なツールは次のふたつの観点から選択すると良い。

まずひとつ考えなければいけないことは、チーム全体が今どういった状況にあり、それぞれのメンバーがどういった心理状態にあるか、そして成果を出すためにはどうあるべきかということだ。

チーム全体にエネルギーをみなぎらせたいのであれば、「ブレーンストーミング」(判断や評価を行わずにひたすらアイディアを出す)が効果的だし、メンバーが何らかの理由で発言しにくいような状態にあるのなら「ストラクチャーラウンド」(テーマに基づいて端から順に発言して行く)がふさわしい。議論が紛糾してメンバーが感情的になっているようであれば「Tチャート」(後述)を用いてそれぞれの長所や短所を客観的に見ることが効果的になるし、「魚の骨図」(後述)で問題の原因を見極めることもできる。

もうひとつの観点は、チームが課題解決において、どのプロセスにあるのかということだ。ファシリテーターは常に「チームが現在直面している課題はなにか」「チームが目標に向かって進むためには次に何をすべきか」と自問し続けなければならない。例えば、今はより多くの視点や意見が必要な段階なのか。それぞれの案の長所短所を見極める段階なのか。それとも意思決定すべきタイミングなのか。それによって必要となるツールも当然異なってくる。通常多くのグループ作業は、複数のツールを組み合わせて行われる。ファシリテーターは、それぞれのツールの目的及び使い方を理解し、チームが直面している課題や能力に合わせ、適切なツールをグループに提示・指示して行くことになる。

では以下にいくつかのツールをご紹介して行こう。
Tチャート Tチャートは、チームが問題に集中しやすいように、また問題を整理しやすいように、物事を二つの側面から考えることを支援するツールである。図のように、T型の線を引き、最上段に二つの標題を書くスペースをとり、アイディアを二つの欄に分けて整理する。Tチャートは、チーム内でアイデアが提案されるのに応じて作成され、情報を比較・対照する際や、情報を視覚的にわかりやすく表示する際にも役立つ。さらに別の効用として、Tチャートは、皆が創出したデータを二つの側面に分けて「迅速に」整理分類することを可能にする。

例として挙げたのは企業組織構成の二つの種類を比べた例だが、他にも、「改善をしない場合に予想される状況/した場合に予想される状況」、「過去のある時点における状況/現在の状況あるいは望ましい未来の状況」、あるいはごく単純に「長所と短所」等いろいろ考えられる。

【情報を正確に共有しつつ整理するにはどうしたらよいか】

「親和図」は ブレーンストーミング等によって出された大量のアイディアを、それぞれの親和性(本来の関連性、あるいは類似性)に基づいてまとめる方法だ。望ましい関連性もしくはカテゴリーに分類するために、グループ分けをし直したり新しいグループを作ることもできる。

親和図は、短時間で多くの情報を整理することを可能にし、多くの情報の間にある複雑さと相互関連性を目に見える形で示すことで、積極的に自分たちの意見を整理することができる。メンバー全員が等しく参加できることも特徴だ。

親和図の使用は、発言量の偏りや、声や影響力の強い人に結果が左右されることを防いでくれる。従って組織横断的なメンバーで行う会議や、上下関係にとらわれずに進行させたい会議で有効だ。

具体的には、分類すべき情報が大量にある場合、アイディアがたくさん出されて収集がつかない状況になっているとき、チームの創造力を刺激しようとする場合、すべてのチーム・メンバーを同時に関与させようとする場合などに用いる。

「魚の骨図」は、問題の原因や目標達成のための要因などを目に見える形で表示することができるツールである。

個人の思い入れや責任のなすりあいを排除する効果も】

まず右端に問題の事象を記す。そこから左に向かって「背骨」を書き、背骨からいくつかの「大骨」を上下に引く。大骨には問題の原因となりうる主要項目を記す。そしてメンバーでブレーンストーミングをしながら「小骨」つまり具体的な原因を書き込んでいく。魚の骨を使うメリットは次の3つである。

  • チームメンバーが問題の事象ではなく問題の原因に集中する
  • 各メンバーの個人的思い入れによる判断あるいは責任のなすり合いなどを排除し、幅広い観点から体系的に問題を分析できる
  • 問題をひとつの絵に図式化することにより、チームメンバー間での意識の共有化を促進する

ここで紹介したのはファシリテーション用の膨大なツールのごく一部に過ぎない。ファシリテーション用ツールのほとんどは、視覚的に論理を展開させるプロセスであり、グループ内でデータやアイデアを作成・整理・評価することを支援するものである。これらのツールを使えば、グループの全員が同時に、同じ情報を見ながら作業を進められるように、資料が表示される。ツールの使い方一つでメンバー間の対立を避け、ポジティブな感情を保ったままチームメンバーの気持ちを容易にひとつにすることが可能になる。ぜひあなたの職場の会議にも取り入れてみてはどうだろうか。