「上手な会議運営を実現するために」

「上手な会議運営を実現するために」
  (シナネン株式会社広報誌「えんゆう」2004年新年号)

シナネン株式会社の広報誌「えんゆう」2004年新年号に掲載された、ファシリテーションについての記事をご紹介します。インタビューはシナネン株式会社の執行役員経営企画部長である菅野清氏と、株式会社ピープルフォーカス・コンサルティングのディレクターである松村卓朗氏によって行われました。

多くの人間がかかわる組織が有効に機能するためには、会議がうまく行われることが必要不可欠です。とりわけ企業組織においては、全体の意思を統一し、メンバーが一丸となって行動することが収益力のアップに直結するだけに、「会議の成功・失敗のもつ意味は非常に大きい」といえます。しかし、現実にはなかなかうまくいかないのが会議の運営。「時間ばかりかかって、なかなか結論がでない」「決まったことが実行されない」といった経験は、どの部署でもあることではないでしょうか。今回は、会議運営のエキスパートでもある経営コンサルタントの松村卓朗さん(株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング)とシナネン執行役員経営企画部長・菅野清さんが、会議をめぐる問題点と解決の方向性を語り合いました。

【コスト意識をもって会議の費用対効果を見直す】

菅野 今回の従業員アンケートを見ても、シナネンの日々の業務において、会議のあり方に多くの問題点があることは明らかです。疑問や不満の声がたくさん出されているわりに、なかなか改善がされない領域のひとつといわざるを得ません。

松村 それは御社にかぎらず、日本のほとんどの企業が抱えている悩みといっていいでしょう。一般的に、組織において会議がうまく機能しているのかを見る尺度には、「効率的か」「創造性があるか」「活性化をもたらしているか」の三つがあるといわれています。もちろん会議の位置づけによって重点は変わりますし、三つをすべて満足させる会議を行うのは簡単なことではないんですが、この基準をおさえておくことはだいじですね。

菅野 まず何より、「ほんとうにこれだけたくさんの会議が必要なのか」という話しがあります。改めて自分のスケジュールを振り返ってみると、会議に費やしている時間があまりにも多くてびっくりするんですが。

松村 それに関しては、会議の費用対効果という視点を導入してみるといいのではないでしょうか。たとえば、10人が集まって2時間の会議をする場合。単純計算で“参加者の時給×10人×2時間”のコストがかかっているわけです。会議を行うことで、これに見合う成果があがっているのかをきっちり検証する。仮に、それだけの効果がないのであれば、会議をやる意味がない。逆にいえば、会議をやるからには、コスト以上の効果を生み出さなければならない。そうした視点で会議のあり方をもういちど見直してみるんです。

菅野 たとえば各営業所では、ただでさえ人員が足りない中で、従業員がお客さまの前に出る時間を削ってまで会議をやる意味をシビアに検証する。あるいは、本社が招集する会議、本社と支社をつなぐ会議、全体の会議、個別会議などの相互の関係にムダがないかも改めて見直す必要がありますね。そこでは、つねにコストと生産性のバランスという視点をもつということですね。

【会議の最終成果物をあらかじめ明確にする】

松村 そのように考えていくと、当然それぞれの会議のもつ意味、位置づけも問い直さざるを得なくなってくるはずですね。

菅野 確かに「なんのためにやっているのかわからない会議が多い」という声もよく聞かれます。典型的なのは、上から方針や目標の数値が下りてきたとき、とりあえずみんなが集まって会議の場をつくるようなパターン。上意下達式に何人かがすきなことをいって、はっきりした方向性も出ないまま、「まあこの会議の結果を踏まえて頑張りましょう」といった感じで解散になってしまうということは避けるべきですね。

松村 なるほど、それはあまりいい会議とはいえないですね。会議を行ううえでは、あらかじめその会議で何を獲得したいのか、最終的な期待成果物を明確にしておくことが必要です。ちなみに、この役割を果たす人をファシリテーター(※下記を参照)と呼びます。ファシリテーターは、介護のプロセスにおいてリーダーの役割を果たすわけです。

菅野 単純に「○○について」といった程度の議題の決め方ではダメということですね。到達すべき点をはっきりさせて、そこに至るシナリオをあらかじめ練り、会議をコントロールしなければならないと。

松村 そうです。また、その期待成果物によって、会議の位置づけを鮮明にしておくことも重要になります。

菅野 報告を聞くためだけに集められる会議には、不満の声がとても大きいんですが。

松村 「情報を共有する会議」「たくさんの意見を出し合う発散の会議」「意見を絞り込んで収束させる会議」「意思決定をする会議」では、それぞれの期待成果分は明らかに異なります。たとえば会議の性格をこの四つに分けるだけでも、招集すべきメンバーや、会議の進め方が変わってくるはずなのです。

菅野 会議のための資料づくりに労力がかかりすぎるといった問題も、そこを明確化することで解決に近づきそうですね。あくまで期待成果を導くために、会議の準備がある。そのつながりが見えると、やるべきことがすっきり厳選できそうです。

【意思決定の会議の前にはとりわけ綿密な準備が必要】

松村 とくに意思決定のための会議は、そこまで決まったことがきちんと実行されなければ意味がありません。

菅野 何かを決めるはずの会議でも、いろいろな意見が出るうちに焦点がぼけてしまうことがよくあります。いまのお話でいえば、情報共有や意見の発散と意思決定がごっちゃになってしまう。

松村 むろん、参加者がみんな、自分が決定に加わったという実感をもつことは、実行へのモチベーションを高めるうえでとてもだいじです。しかし、そのためにこそ、会議のコントロールを適切に行うことが重要なんです。意思決定の前提には、最後に「イエス」「ノー」のかたちで判断ができるまで、提案が練られていることが必要です。そのためには、それぞれの提案のメリットとデメリットが明らかになっていなければならない。

菅野 先ほど話題に出たファシリテーターは、そこまでの準備を行っておく必要があるわけですね。役割の重要性がよくわかってきました。

松村 組織運営におけるファシリテーターの育成、活用を経営上の課題として高く位置づけ、成功した例としては、「日産自動車㈱」の改革があげられます。また、ある金融機関では、「トップダウン型のリーダーがいる支店より、ファシリテーター型のリーダーがいる支店のほうが、明らかに業績がいい」というデータが発表されました。ファシリテーター論は、「実際に企業の収益に直結するテーマになっている」といえます。

【“書く”ことで確認する効率化と意識化の一石二鳥】

菅野 最後に、明日からでもすぐに使える会議成功のためのノウハウをおしえていただけませんか。

松村 そうですね。たとえば、会議の過程でホワイトボードなどを有効に活用して、メンバーみんなが見えるように“書く”というテクニックを使ってみるというのはどうでしょうか。

菅野 具体的にはどういう意味があるんでしょう。

松村 会議というのは、ああでもないこうでもないといっているうちに、あらぬ方向に話が流れてしまうことがよくあります。そこで、「今話されているテーマはこれ」「コンセンサスが得られたのはここまで」というふうに、要点をみんなが見えるかたちに書き出していくんです。これによって、効率化と意識化を同時にはかることができます。

菅野 なるほど。

松村 じつは“書く”ことにはもうひとつ効用があります。発言がいったん書き文字になることで、発言者の人格と切り離された客観的な意見に見えるようになる。結果的に「あいつがいったっことだから気に食わない」というような、反論のための反論合戦になることも回避できるんです。

菅野 最終的な決定事項をもういちど確認するうえでも、ホワイトボードなどに“書く”ことは意味がありそうですね。あくまで会議の最終成果物にこだわるというお話ともぴったり一致しています。本日はありがとうございました。


【ファシリテーター Q&A】

Q1 ファシリテーターとはなんですか

A1 ファシリテーションとは、「促進する、円滑にする、助長する、スムーズに運ばせる」といった意味の英単語です。すなわち、コミュニケーションに介在する一種の技術と考えてもらえればいいでしょう。ファシリテーターは、この技術を用いて組織のパワーを最大限に引き出し、組織の成果が最大化するよう支援する役割を果たす人のことを指します。

Q2 ファシリテーターがかかわることで問題解決にどのような特徴が生まれますか

A2 問題解決自身は、あくまでメンバーの手によって行われるものでうs。ファシリテーターは、おもにそのプロセスをコントロールします。ファシリテーターがうまく役割を果たすと、コミュニケーションを通じてメンバーがお互いに理解し合い、共感し合って、創造的な解決法を生み出すことができます。同時に、そのプロセスがあることで解決策に対する納得感が醸成されるため、実行にむけてのメンバーのモチベーションが高まり、チームワークが強固にもなります。

Q3 従来型のリーダーとファシリテーターはどこが違うんですか

A3 多くの日本型組織において、リーダーの役割は、たんに仲介し調整をするだけか、あるいは上から指導、説得をするだけかに偏る傾向がありました。しかし、ファシリテーターはこのいずれのアプローチとも異なり、ます。いってみれば、ファシリテーター型のリーダーとは、メンバーを側面から支援しながらその創造的な力を引き出す、共感・協働方のスタイルをもつ、柔らかなリーダーといえます。

Q4 ビジネス界においてファシリテーターはどのように注目されているんですか

A4 代表的なファシリテーターとしてよく名前をあげられるのが、日産自動車㈱の経営を立て直した、カルロス・ゴーンさんです。また、「ゼネラル・エレクトリック社」でも、期待されるリーダーシップの柱としてファシリテーション能力がしっかりと位置づけられています。


【会議の3つのポイント】

ポイント1
会議の費用対効果(コスト意識)をつねに念頭におく

会議には、必ずコストがかかっている。会議を行う際には、生み出す成果が、このコストを上回るものになっているかを意識することが必要である。
「参加者が、会議に出席し拘束されている時間をほかの業務に費やしていれば、一定量の仕事ができたはずだ」「行われる会議が、この仕事量の価値を上回る価値をもっていなければ、かいぎをやる意味はない」あるいは、もっと単純に逆にいえば、会議を行うからには、必ずコストを上回る成果を生み出さなければならない。「参加者の時給×人数×会議にかけた時間以上の生産性がなければ、その会議は失敗だ」ともいえる。

ポイント2
会議を行う際には、あらかじめ期待成果物を明らかにし、そこに至るシナリオをねる

会議を行う際には、「○○について」といった曖昧なテーマ設定を避け、その会議を通じて必ず獲得すべき期待成果物を明らかにしておく。
期待成果物とは、会議の性格、性質によって異なるが、たとえば具体的な意思決定であったり、参加者全員の納得と理解を得ることであったりする。要するに会議を主催するのであれば、「何を決めるのか」を明確にし、そこに向かってメンバー全員が参加意識を高めながら議論が展開されるよう、「コントロールをする」ことが重要なのである。

ポイント3
会議は、議論のポイント、到達点などを、全員が見られるホワイトボードなどに書き出しながら行う

会議の過程で、現在議論すべきことがら、コンセンサスが得られた到達点、あるいは意見が分かれている点などは、そのつどホワイトボードなどに書き出して、全員が一目でわかるようにする。
つねに、何が話し合われており、決めるべきことがらに関して、現在の会議の状況がどの位置にいるのかを意識化するための工夫である。同時に、それぞれの個人の意見が、書き文字になることにより、(発言者の)人格と切り離され、客観的なものになる効用もある。