チームワークを醸成して変革ファシリテーションを 成功させる

今回のテーマは「チームワークを醸成して変革ファシリテーションを 成功させる」です。

変革推進の成功には、変革推進チーム自体の「チームワークの醸成」が欠かせません。
ひとことで「チーム」といっても実態は様々です。PFCでは、これを3段階に分けて考えています。

(1)グループ(個人の集合体で、各メンバーが持つ力の総和以上の成 果は生まれない
(2)チーム(明確なゴールと役割が設定されており、メンバーの総和以上の成果が期待できる)
(3)ハイパフォーマンスチーム(メンバーが有機的につながりあい、それぞれの役割を越え助け合いながらゴールに向かう)

変革推進チーム自体が(3)のハイパフォーマンスチームとして存在することが、変革の成否を握るといっても過言ではありません。

ある企業では、顧客サービス戦略策定のプロジェクトを発足させるにあた り、各部門から2~3名ずつのメンバーを集め、総勢20名のチームを組みました。 リーダーのAさんはまず、顧客の声や社員の意識調査の結果などのデータをチームでシェアすることによって、メンバーの危機感を醸成し、メンバーたちが自由に話し合う場も設けました。

ここまでは通常のプロジェクトでもよく行われていることですが、Aさんはさらに、メンバーの一体感を高めるために、バリューワークショップというセッションを行いました。

各部門から2~3名ずつのメンバーが集まった、顧客サービス戦略策定のプロジェクトを発足にあたって、A氏が行った取り組みのふたつめは、バリューワークショップ。まずは、メンバーを二人一組にして、それぞれの「至高体験」について60分ずつのインタビューを互いに行ってもらいました。

ビジョンや価値観の策定に当たって「話しあって決めましょう」とい うアプローチでなく、メンバーのひとりひとりが自分自身の価値観や、この取り組みに対する考え方を明確にし、表現してもらうことがこのワークショップの要諦で、その第一段階として行ったのが、自分の仕事の中での至高体験をトリガーに、そこで学んだことや意識の変化、理想とする組織像などに話を発展させていくことでした。 このような体験を思い出し、語るときは、思考が前向きになっていくので、変革に対して積極的に取り組む意識を醸成できる効果もありました。

ペアでのインタビューが終わった後は、全体の20名を3つのグループにわけて、自分の価値観や、組織のビジョンについて改めて語り合ってもらいました。

自分の価値観や、組織のビジョンについて改めて語り合ったあとは、 「私たちが目指す顧客サービスの形」というテーマで、10分程度の短い劇で表現することを行いました。作り上げたビジョンを、字面だけでとらえるのではなく、完全に理解するために2時間の対話を行い、さらに5感をフルに活用した「劇」の形にまとめる作業です。お互いの理解があいまいなままでは作品は作れません。対話を通じて、一体感を醸成することができます。 また、「劇」を見る側も、言葉だけではなく、表情や体全体から発せられるメッセージを感覚的・直感的に受け取ることができます。

このチームの「劇」では、独創的な演出が相次ぎ、涙を流して感動したメンバーもいました。終わった後の振り返りでは、
「あのときの表情には自分も共感できた」
「あのときの手を差し出した動きには、どんな意味がこめられていたのか?」
といった対話の中から、観客を含めた多くのメンバーが感動したポイ ントが明確になっていき、それこそが自分たちの理想とする姿であり、 共有できるビジョンなのだということが確認されました。

「私たちが目指す顧客サービスの形」というテーマで、10分程度の短い劇を行ってビジョンを共有した後は、このビジョンを実現するための行動計画作りにとりかかりました。これは具体的なアクションプランを列挙したリストではなく、現在の自分たちに対する 「挑戦状」という形式をとって、「やらされ感」を払拭しました。 この過程でプロジェクトリーダーであるA氏が「私たちの挑戦は、日本の顧客サービスのモデルになることなのではないか」とつぶやきました。これは当初から準備されたものではなく、A氏がワークショップを通してメンバーとコミュニケーションする中で、ふっと生まれてきたコメント。このコメントがチームメンバー全員の心に火をつけ、このときの感動が、その後のプロジェクトの機動力となっていきました。

こうしたピークの瞬間を作り出すことは、ハイパフォーマンスチームの形成における鍵を握っていますが、そうそう簡単にできることではありません。その意味で、バリューワークショップのファシリテーションは、むずかしくもあり、やりがいのある役割だといえるでしょう。